10.9「BRIDGE4th」日比野選手レポート
今回のBRIDGE出場選手の中で唯一トーナメント出場の日比野。前回「ストライキング チャレンジ」で見事KO勝ち、MVPを獲得し勢いに乗っている。とはいえ、彼もまだ8ヶ 月足らずの経験で、しかもハイレベルのトーナメント出場。彼にとって今回のBRIDGE はひとつの試練であり、逆に勝ち抜けば今後の道が大きく開かれる、いわばターニン グポイントではなかったかと思う。
結果はご存知のように見事、−67sトーナメント優勝であったが、その舞台裏は過 酷な状態との戦いであった。
彼が1回戦を難なく判定勝ちしたあと、自分のところに来て「会長、足が・・・」。 見てみると、右足の甲の部分がひどく腫れており、ひと目で尋常ではない状態とわ かった。すぐに氷で冷やして、大会ドクターのところに連れていき診てもらったとこ ろ、「骨が折れている可能性があります。」との宣告・・・。確かに腫れ方が異常だ し、内心ではそうでないことを祈っていたが、「やっぱりか・・・。」と。次の答え は予想できていたものの一応ドクターに「2回戦以降大丈夫でしょうか?」と確認し てみた。「難しいと思います・・・。」なんてことだ、こんなところで・・・。
とりあえず悲嘆していても仕方ない、日比野にとって最善の方法を決断しなければな らない。それは二つに一つだけ、試合を継続するか棄権するかだ。本人は「やりたい です。」とは言うものの、まともに歩けないどころか、まっすぐ立っていられない状 態。普通に考えたら即ストップの状況だ。選手の身を預かる者として、試合後家に無 事選手を送り届けるという義務と責任が自分にはある。ましてや彼はまだ若い。この 怪我が後遺症となって将来のある若者をここで潰してしまったら・・・。自分の考え は限りなく試合続行は「NO」だった。ただ、彼も今日この日のために毎日遠くからジ ムに通い、必死に練習している。やはり加藤と同じ、プロのリングに上がりたいとい う。この状況を乗り越えたとき手に入れるであろう強靭なハートは何物にも代え難 い。
ひとつの賭けだ、自分は「怪我の状況は決して楽観できるものではないこと、今後も アマチュア大会はたくさんあり今回がすべてではないこと」を伝えたうえで「最後は 自分で決めろ、決めたことに対して全力でサポートしてやる。」と話しました。長い 沈黙・・・。彼が発した言葉は「やります。」どうやら覚悟を決めたようだ、ここで 自分も覚悟を決めなかったら会長失格だ。「よしわかった、やるぞ。」重く、苦しい 決断でした。
そして、すぐに次に打つべく手を打ちました。まずドクターに右足を固定するための テーピングをお願いし、あとはずっと氷で冷やす。それから得意なローキックもミド ルキックもできないのでパンチとヒザのみで戦う作戦を立てました。それでも準決勝 が始まる直前、自分は弱気になっていたのでしょう、セコンドのみんなに「日比野の 足はもう動かん。だから精一杯声を出してやってくれ。その声だけが頼りだ。」と指 示を出しました。そして試合が始まると、彼は立てた作戦通り左右ストレート、ヒザ のみで相手を追い詰めていく。自分の指示を忠実に守って・・・。結果、判定勝ち。 喜ぶみんなを尻目に「すぐ氷で冷やせ!」自分の中にはもう決勝戦のことしか頭にな かった。が、できる事といったら冷やすくらいのことしかない。なおかつ決勝の相手 は他のアマチュア大会で何度も優勝経験のある選手。自分の立てた作戦と、日比野の 「絶対勝つ!」という精神力だけが一縷の望みであった。
出番を待つ日比野・・・。準決勝の時より落ち着いているようだ。そしてゴング。相 手はさすが決勝に勝ちあがった選手だ、パンチで圧力をどんどんかけてくる。それで も日比野は作戦どおり首相撲でガッチリ受け止める。大したものだ、動かない足で・ ・・。相手もこういう組んでばかりの展開に慣れていないのであろう、若干後半バテ ているようであった。お互いなかなか決定打がないまま、本戦終了。判定はドロー。 延長戦に入る。インターバルの間、「あと残り2分だけだ、先手先手で攻めろ。ヒザ を蹴るタイミングがまだ遅いんだよ!」と彼のがんばりが最後実を結ぶように、心を 鬼にして指示を出す。延長戦、相手もやはりスタミナ切れのようだ、首相撲の体勢に なるとよくバランスを崩している。チャンスだ!「日比野!首をしっかり捕れ!まっ すぐヒザを蹴るんだ!」タイミングよくヒザが出る。そして2分間の延長戦が終了。 内心「勝った!」と思ったが、判定結果を聞くまではわからない。「勝者、赤コー ナー日比野!」嬉しいというよりホッとした瞬間であった。
彼が負ったダメージも大きいが、彼が得たものははるかに大きい。それは戦う姿勢で あり、絶対勝つ、最後まであきらめないという強い心だと思う。彼の活躍はキング・ ムエにも活気をもたらしてくれるでしょう。また、キング・ムエみんなの代表として これからも活躍してほしいと思います。
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